性能だけじゃない包丁の選び方|鋼材・柄・見た目・職人
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前回は、
「高い包丁は、本当に良い包丁なのか?」
という話をしました。
- 切れ味
- 硬度
- 刃持ち
- スペック
この辺りを考えていくと、最終的には一つの問題にぶつかります。
性能だけでは決められない。
今回はそこから先の話です。
鋼材は大事。でも鋼材だけを見ないでください
包丁について調べていると、
- VG10
- SG2
- 銀紙三号
- 白紙二号
- 白紙一号
- 青紙二号
- 青紙一号
- 青紙スーパー
いろいろな名前が出てきます。
そして調べれば調べるほど、
「SG2の方がVG10より上なのか?」
「白紙一号の方が白紙二号より切れるのか?」
「青紙スーパーって名前からして強そう」
みたいな話になっていきます。
気持ちは分かります。
名前と数字が付いていると、どうしても順位を付けたくなるんですよね。
ただ、
鋼材は包丁の性能を決める重要な要素ではありますが、包丁そのものではありません。
同じSG2でも、熱処理、硬度、刃の厚み、研ぎ、刃付けなどが変われば、 使った感覚も変わります。
包丁の性格を左右する要素
同じ白紙一号でも、誰がどう作ったかによって性格は違います。
ですから鋼材は、
包丁を選ぶための答えではなく、包丁の性格を理解するための材料
として見ると分かりやすいと思います。
「SG2が欲しい」
でも構いません。
でも、その理由を一度考えてみてください。
「錆びにくくて、刃持ちが良いものが欲しい」
という希望が先にあって、その候補としてSG2が出てくる。
この順番の方が、自分に合った包丁には辿り着きやすいと思います。
柄は見た目だけのものではありません
刃の話ばかりしていると忘れがちですが、包丁には柄があります。
包丁の柄には、大きく分けると、
- 和柄
- 洋柄
があります。
一般的に和柄は比較的軽いものが多く、洋柄は重量のあるものが多い傾向があります。
そして、この重量差は思っているよりも包丁全体の使い心地に影響します。
同じような刃でも、軽い和柄を付けると刃側の重さを感じやすくなり、 重い柄を付ければ手元側に重心が寄ってきます。
つまり、
柄が変わると、包丁全体のバランスも変わる
ということです。
また、握ったときの感覚は数字ではなかなか説明できません。
八角柄が好きな人もいれば、洋柄の方が手に馴染む人もいます。
- 太い方が好きな人
- 細い方が好きな人
- 軽い方が好きな人
- 重い方が好きな人
この辺りはかなり個人差があります。
「高い柄の方が握りやすい」
という単純な話でもありません。
実際に持てる環境であれば、ぜひ持ち比べてみてください。
写真で見ていたときには第一候補だった包丁を握ってみたら、
「あれ?」
となることもあります。
逆に、全然候補に入れていなかった一本を握った瞬間、
「これだ」
となることもあります。
見た目で選んでもいいんです
ここまで真面目にいろいろ考えてきました。
じゃあ最後は性能を全部比較して、最も合理的な一本を選びましょう。
……と言いたいところですが、
見た目で選んでもいいんです。
むしろ私は、見た目もかなり重要だと思っています。
- ダマスカス
- 黒打ち
- 鏡面
- 槌目
- 黒染め
- 漆の柄
- 天然木
包丁には本当にいろいろな見た目があります。
「見た目だけで選ぶのは良くないですか?」
と聞かれることがありますが、用途を満たしている候補が何本かあるのであれば、
最後は好きな見た目で決めても何も問題ありません。
毎日使う道具です。
気に入った包丁がキッチンにあることで、
「今日はこれを使いたいな」
と思える。
料理するのが少し楽しくなる。
それだって道具として立派な価値だと思います。
特に高価格帯の包丁になるほど、性能だけでは説明できない価値が増えてきます。
- 職人
- 模様
- 仕上げ
- 希少性
その中で、
「なんかこれが好き」
という感覚は、意外と大切です。
「誰が作ったか」で選ぶ
そして最後は、
「誰が作った包丁なのか」
という世界です。
日本の包丁づくりでは、一本の包丁を一人だけで完成させるとは限りません。
- 鍛造をする鍛冶師
- 形を整え、刃を作る研ぎ師
- 柄を作る職人
それぞれの工程を専門の人が担当することがあります。
最初は、
「青紙一号が欲しい」
だった人が、
そのうち、
「この鍛冶師の青紙一号が欲しい」
になって、
さらに進むと、
「この鍛冶師と、この研ぎ師の組み合わせが欲しい」
となります。
ここまで来ると、かなり包丁を楽しんでいますね。
- 同じ鋼材
- 同じサイズ
- 同じような形
それでも、作り手が違えば性格が違う。
その違いを知っていくのも、日本の包丁の面白いところだと思います。
もちろん、最初の一本から職人名を全部覚える必要はありません。
「そういう選び方もあるんだ」
くらいで十分です。
もしそのうち、入荷時期の分からない包丁を何か月も待つようになったら、
ようこそ。
結局、自分が「使いたい」と思えるか
ここまで3回にわたって、包丁の選び方についていろいろ話してきました。
ずいぶん増えました。
でも、全部を完璧に理解してから包丁を買う必要はありません。
最初に必要なのは、
それだけです。
- 性能を最優先してもいい
- 手入れの楽さを優先してもいい
- 好きな職人で選んでもいい
- 見た目にひとめぼれしてもいい
最終的には、
「これを使いたい」
と思えることがかなり大切だと思います。
そして、
「いろいろ読んだけど結局よく分からん」
となった方。
そのまま店に来てください。
用途と予算だけでも教えてもらえれば、一緒に考えます。
何も分からない状態から、その人に合う一本を探していく。
それも包丁屋の仕事です。
最初の一本を買って、使ってみる。
すると、
- 「次はもう少し長いのが欲しい」
- 「炭素鋼も使ってみたい」
- 「今度は職人で選んでみたい」
と、自分の好みが少しずつ分かってきます。
一本ですべてを完璧に決める必要はありません。
包丁は道具です。
でも、せっかくなら、
使うたびに少し嬉しくなる道具を選んでください。
その一本を探すお手伝いができれば、私たちも嬉しいです。
そして最終的に、
「包丁を買うなら、とりあえず三浦刃物店を見てみよう」
と思ってもらえたら、この3本を書いた意味もあったというものです。
それでは、また次の記事で。